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築40年以上経過した戸建て住宅の多くは、改正前の建築基準法に基づいて建設されています。1980年以前に建てられた住宅で引き続き居住を望む場合には、耐震補強工事を行うことで安心して生活できるようになるでしょう。今回は、そうした耐震補強を行う際のポイントをご紹介します。
今回の能登半島地震では古い木造家屋が数多く倒壊しました。これをうけて、国土交通省は現行の耐震基準についても見直しが必要かどうか分析を進めるとの報道もあります。
住宅を取得・維持するうえで、自宅がどの程度耐震基準を満たしているかを把握しておくことは、ご自身・ご家族の命や財産を守るために必要不可欠です。コラムを確認して建築基準法の変遷や耐震補強について学習してみましょう。
築40年以上の住宅で耐震補強をすべき背景
築40年以上経った戸建て住宅の多くは現行の耐震基準を満たしていないため、補強工事が望ましい状況にあります。建築基準法の改正により、「震度6強〜7に達する大規模な地震で倒壊・崩壊しない」という新たな耐震基準が設けられたのは1981年のことでした。つまり、1980年以前に建設された住宅は、大地震時の耐震性能が比較的低いケースが多いと言えるでしょう。また、1981年以降に建てられた物件であっても、年月の経過に伴う劣化や自然災害のリスクを考慮し、耐震性を確保することが肝心です。
住宅の耐震性を示す「耐震基準」とは?
「耐震基準」とは、建物が一定水準の耐震性能(最低限の耐震能力)を備えていることを示す基準のことです。この基準は建築基準法および関連の施行令により定められており、建物の建築許可を行う際の判断基準として用いられています。
つまり、耐震基準を満たしていない建物は、地震に対する十分な安全性が確保されていないと見なされ、建設が認められない仕組みになっているのです。
耐震基準の歴史的な流れ・旧基準から新基準へ
建築物の耐震基準は、大規模な地震被害が発生するたびに見直されてきた経緯があります。最も重要な改定のタイミングは、「1981年」および「2000年」と言えるでしょう。
1981年の改定では、大地震時に建物が倒壊することを防ぐため、より厳しい耐震性能が求められるようになりました。そして2000年には、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、さらに基準が引き上げられることとなりました。
このように、過去の甚大な被害を契機に、着実に耐震安全性の確保が図られてきたのが耐震基準の変遷です。最新の基準を満たせない老朽住宅については、適切な補強が必要不可欠とされています。
1950年 「建築基準法」が制定 |
1968年 十勝沖地震 (M7.5) 1971年 建築基準法 改定 (RC造の構造基準強化) |
1978年 宮城沖地震 (M7.5) ※RC建築物の倒壊などが発生。耐震基準の大きな不備が発覚 1981年 建築基準法 改正 (抜本的に見直され「新耐震基準」が誕生) |
1995年 阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震) (M7.3) 1995年 「耐震改修促進法」の制定 |
2000年 建築基準法 改正 (木造の耐震基準強化) 2001年 「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」の制定。 ※「耐震等級」の誕生 |
2011年 東北地方太平洋沖地震 (M9.0) 2013年 耐震改修促進法 改正 (一般住宅の耐震診断の努力義務化) |
【旧耐震基準(1981年以前)の特徴】
1981年の改定以前に適用されていた旧耐震基準と、改定後の新基準とでは、大きな違いがあります。旧基準の木造住宅は、新基準を満たす木造住宅と比べ、耐震性能が約半分程度に過ぎないと指摘されています。旧基準が目指したのは「震度5の地震揺れにて、建物が倒壊しないこと」という水準でした。そのため、震度6強や震度7といった激しい揺れに見舞われれば、倒壊の危険性が非常に高まってしまいます。
実際、最近の「震度6弱以上」の地震では、旧基準の下に建てられた木造住宅が次々と倒壊する惨事が起きています。旧基準では想定されていなかった大地震に対する脆弱性が露呈した形です。
旧耐震基準の木造住宅の特徴 (例) |
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●(震度5を前提とした強度設計のため)全体的に「耐力壁量」が不足 |
●「耐力壁の配置バランス」が悪い(地震に対する脆弱性がある) |
●柱・土台・梁(特に「土台と柱」)の接合強度が低い |
●基礎の強度不足(基礎に鉄筋が入っていない/無筋) |
【新耐震基準(1981年~1999年)】
1978年の宮城県沖地震によって大きな被害が出たことを契機に、1981年に抜本的な耐震基準の見直しが行われました。従来の旧基準は、「震度5程度の揺れに対して建物が倒壊しない」ことを目標としていましたが、新基準では「震度6強〜7に達する大規模な地震で倒壊・崩壊しない」ために、より厳しい耐震性能が求められることになりました。
1981年の新基準で特に重視されたのが、木造住宅における「耐力壁」の性能強化でした。具体的には、より強度の高い新しい耐力壁の種類が追加されたほか、必要とされる耐力壁の量や強度倍率の引き上げが図られました。こうした耐力壁の機能性向上が、新基準の大きな特徴と言えるでしょう。
【新耐震基準(2000年〜)】
1995年の阪神・淡路大震災は、近年に起きた最も甚大な地震災害と位置付けられています。この震災を機に、従来の耐震対策である「耐力壁の強化」だけでは不十分であることが明らかになりました。壁の強度を上げただけでは、建物全体の耐震安全性を十分に確保できないことが判明したのです。
こうした反省を踏まえ、2000年に建築基準法が改正され、新たな耐震基準が導入されることとなりました。
基礎の強度を高めるために「基礎構造」に関する規定を追加 |
「土台・柱・梁」の接合部の強度を高めるための仕様規定が明確化 |
耐力壁に関して「配置バランス計算」を追加 |
阪神・淡路大震災を経て、建物全体の強度はもとより、部材一つ一つにまでおよぶ細かい設計が求められるようになったのが、現行の新耐震基準の特徴です。
耐震診断・工事の相場金額
築40年以上の住宅の耐震診断・工事の費用相場は次の通りです。
耐震診断 | 10〜40万円 |
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耐震改修 | 125〜300万円以上 |
耐震改修工事の費用は、住宅の築年数や構造、補強箇所と方法などによって大きく変動します。場合によっては300万円を超えるほど高額になる可能性もあります。主な補強箇所別に、工事の内容と概算費用を説明します。
壁の耐震工事について
壁は、地震や台風時の横揺れを抑制する上で、建物の耐震性確保に大きく寄与する重要な構造部材です。しかし年月の経過とともに劣化が進めば、その役割を十全に果たせなくなってしまいます。特に築40年以上が経過した住宅で、大型の窓や16畳超の広間があるケースでは、横揺れに対する脆弱性が高まっているため、壁の補強工事が推奨されます。 壁の耐震補強方法には、主に2種類があります。ひとつは「耐力面材」と呼ばれる板を導入する方式。もうひとつが、壁体に対して斜めやバツ形に構造用の「筋かい」を組む工法です。築年数に応じて適切な補強を施すことで、壁の耐震性能を回復・向上させることができます。
壁の耐震補強工事は、部分的な補強であれば1ヶ所当たり9万円から15万円程度が一般的な費用相場です。一方で、築40年以上経った住宅全体を補強する場合は、平均で150万円から200万円前後が見込まれます。ただし、壁が多数ある広い住宅では、さらに高額になる可能性があります。補強範囲が広がれば費用は高くなりますが、部分補強であれば比較的低コストで実施できます。住宅の状況に合わせて適切な工事内容を選び、事前に十分な見積りを取ることが賢明でしょう。
耐力壁による補強 | 9〜15万円/1箇所 |
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住宅全体の補強 | 150~200万円 |
柱の耐震工事について
柱の耐震補強には、「山形金物」や「筋かいプレート」などの金具を使って既存の柱を補強する方法があります。この場合、金具の設置費用のみで5万円から20万円程度と比較的低コストです。
しかし、築40年以上が経過した住宅では、柱自体が老朽化している可能性が高く、金具での補強のみでは不十分になることが多いです。そういった場合は、柱の全面的な取り替え工事が必要となり、費用は100万円から300万円前後と高額になる見込みです。
老朽化した柱は、地震時に倒壊する危険性が高まるため、適切な補強が不可欠です。自宅の耐震性について心配な点があれば、事前に専門家による耐震診断を受けることをおすすめします。診断結果を踏まえて、必要な補強工事の内容を検討するのが良いでしょう。
金具設置のみ | 5〜20万円/1箇所 |
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朽ちた部分のみの補修 | 1〜5万円/1箇所 |
基礎も含めた大きな補修 | 100〜300万円 |
屋根の耐震工事について
屋根の耐震補強工事では、軽量で耐久性の高い「スレート」への葺き替えが多く選択されます。築40年以上の古い住宅には、重量のある和瓦やトタン板が使われているケースが多く、その重さが耐震性を低下させる一因となっていました。屋根が重いほど揺れへの耐性が低下するため、補強工事では屋根荷重を軽減し、地震時の柱や壁への負担を最小限に抑えることが重要視されます。
屋根の葺き替え工事費用は、1平方メートル当たり概ね5,000円から7,000円が一般的な相場とされています。屋根全体を施工すると、総額で80万円から150万円前後が見込まれる場合もあります。屋根の広さや構造によって費用は変動しますが、全面的な補強となれば高額になる傾向にあります。
1995年の阪神・淡路大震災では、建物の倒壊などによる圧死・窒息の犠牲者が8割以上を占めていました。一方、2004年の新潟県中越地震の場合、同様の原因による死者の割合はわずか2割程度に留まったと言われています。
この大きな開きの背景には、両地域の住宅の屋根構造の違いが影響していたと考えられています。豪雪地帯の新潟では、もともと一般的に屋根を軽量化する工夫がなされていたためです。一方、神戸は雪国ではないため、比較的重い屋根構造の住宅が多く、揺れへの脆弱性が高くなっていたと推察されます。
このように、軽量な屋根は地震に強いだけでなく、万が一の倒壊時の被害範囲も最小限に抑えられる可能性があります。屋根の減震改修は、命を守る上で重要な意味を持つと言えるでしょう。
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【参考・監修】
株式会社じげん
【引用元】
リショップナビ
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